このスツールのベースは、15世紀の靴職人が使っていたと言われているシューメーカースツールです。
デコボコした床でも安定する3本脚を持ち、おしりの形状に合わせた座面が特徴のスツールです。
今でもデンマークのワーナーと言う会社が生産しています。
実際に座ってみると極厚の座面を大胆に彫り込んだ形状が美しく、包まれるような座り心地が素晴らしいスツールです。
三本脚のスツールは、この椅子から学び、自分好みに制作したスツールです。

シューメーカースツールはその形状からフィット感が素晴らしいのですが、座る向きが前向きに固定されてしまいます。
疲れて少し横を向こうとしたら大きな凹凸にじゃまされます。
長時間同じ姿勢で作業する靴職人には良いのですが、あまりキチンと座るタイプではない私にはちょっと・・・。

また綺麗なスツールなのでインテリアとして置いて上に何か飾ろうとするのですが、置けるモノが限定されてしまいます。
大きな凹凸がモノを置くには不都合なのです。

脚の先端が丸くなっているのも、一点に荷重が集中するため、床に深い傷が付きやすく、傷つき防止フェルトなども貼りにくいため、改善したいポイントです。

シューメーカースツール
Form & Refine scandinavia-design.frより引用

三本脚のスツールは、もう少し人間の自由を許容してくれる緩い椅子にしたいと思い、凹凸を小さくエッジが緩やかな形状にしました。
動かしやすさと持ちやすさを狙い、板厚を抑えて軽量化しています。
一方、そのためにフィット感が犠牲になるのは避けたかったため、シューメーカースツールとは異なるアプローチをすることにしました。
シューメーカースツールがおしりと触れる面積を広くする方法でフィット感を作り上げていることに対して、三本脚のスツールは体圧分布を均一にするアプローチ、すなわち座面と強く当たる骨盤の周辺の圧力を下げる凹み形状で快適な座り心地を確保しています。
この凹みも骨が当たる部分のみを削ると、その周囲への圧力が上がってしまいます。
また凹み形状が主張するようなデザインにはしたくなかったため、削って座ってを繰り返し、私にとってちょうど良いカタチに仕上げました。
ぜひ実際に座って座り心地を確かめて頂きたいと思います。

また座板の側面を触ってスベスベ感も感じて頂きたいと思います。
この椅子はウレタン塗装等の樹脂で表面を覆ってしまうタイプでなく、木に浸透していくオイル塗装で仕上げているため、木の肌触りがダイレクトに伝わってきます。
そのため、木口などは少しざらついた感触が残りやすいのですが、ヤスリを丁寧に何度もかけることにより、ツルツルのレベルまで仕上げることができます。
これもぜひ実物を触って感じて欲しいと思います。
ゆっくり丁寧につくることは、大切なことなのです。

ハイスツールとは異なり、全体重をかけてしっかり座ることを想定して、強度上 貫を付けています。
座面が低く、脚の角度も大きくなり脚が広がる方向に大きな力が加わるため、必要だと考えています。
ハイスツールがシュッとしたイメージなのに対して、こちらはスタンスが良く柔らかみを感じるデザインを施しています。
下になるほど太くなる脚形状やシューメーカースツールと比較して薄くした座板などで重心を低く設定し、安定感を感じて頂けると思います。
座面形状も板厚が大きく見えしっかりした印象を与えてくれます。

Slow & Politeでは、座面の高さや座面や脚の形状について、講師と完成品のイメージを相談し、それを実現するためのデザインや加工方法のレクチャーを受けながら作って頂けます。

定員

 6人

料金

 ¥35,100(5日間)

樹種

 ブラックチェリー、他の樹種も選べます。

デザイン